最高裁 昭和61年2月14日 第二小法廷判決(昭和59年(あ)第1025号道路交通法違反被告事件)(刑集40巻1号48頁、判時1186号149頁)

〈要約〉被告人の運転する普通乗用車が、女性の同乗者を乗せている時、被告人と一緒に写真撮影をされた。そこで、以下の法に違反するという主張に基き、上告した。

1. この取締りは、承諾なしに運転者及び同乗者の容ぼうを撮影するがこれは、肖像権、プライバシーの権利を侵害する(憲法13条違反
2. 運転者が同乗者と一緒にいるところを撮影することは集会及び結社の自由を侵害する(憲法21条違反
3. この取り締方では法自動二輪車や大型車は補足できず、法の下の平等に違反する(憲法14条違反
4. この方法では、車両速度しか把握できず、違法性、有責性に関する証拠としては、後日被告人もしくは同乗者から記憶にもとづく供述が求められるだけであるので、被疑者、被告人の防御権を侵害する。(憲法31条35条37条違反
5. 予防、指導といった警察官の義務を放棄して、違反行為をあえて制止せず検挙だけを行うもので、警告も十分でなく、囮捜査とその精神を同じくし、適正手続きの保障を侵す。(憲法31条13条

〈判旨〉弁護人の、「憲法13条、21条違反をいう点は、速度違反車両の自動撮影を行う本件自動速度監視装置による運転者の容ぼうの写真撮影は、現に犯罪が行われている場合になされ、犯罪の性質、態様からいって緊急に証拠保全をする必要性があり、その方法も一般的に許容される限度をこえない相当なものであるから、憲法31条に違反せず、また、右写真撮影の際、運転者の近くにいるため除外できない状況にある同乗者の容ぼうを撮影することになっても、憲法13条、21条に違反しないことは、当裁判所昭和44年12月24日大法廷判決(刑集23巻12号1625頁)の主旨に徴して明らかであるから、所論は理由がなく、憲法14条、31条、35条、37条違反をいう点は、本件装置による速度違反の取締りは、所論のごとく、不当な差別をもたらし、違反車の防禦権を侵害しあるいは囮捜査に類似する不合理な捜査方法とは認められない。」

尚、判例というのは、この裁判だけの結果というわけではなく、後の裁判の指針にもなるものなので、法の解釈(公共の福祉など)の判断基準になる大切な資料となるのである。/道研

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